はじめに
本書は2017年5月3日に東京丸の内で開催されたヤロン・ブルック氏のセミナーの記録をEvolving社が1冊の本に編集したものです。
ブルック氏は、難しい哲学用語を一切使わない平易な話し言葉で、ときに理解が難しいともいわれるアイン・ランドの合理的利己主義哲学を詳しく解説しています。哲学の学生ではない一般のセミナー受講者からのさまざまな質問への明快な回答も印象的です。
ヤロン・ブルック氏はイスラエル生まれの61歳。16歳のときに友人から借りたアイン・ランドの小説を読んで非常な衝撃を受け、それまで信じてきた社会主義思想を放棄し、アイン・ランドが体系化した哲学オブジェクティビズムを取り入れて、やがて体現するようになったといいます。
16歳のときのエピソードがふるっています。子供の頃から両親に叩き込まれてきた社会主義的な考え方をアイン・ランドに100パーセント否定されたブルック氏は、あまりにも頭に来て友人に借りた本を部屋の壁に投げつけたと言います。今まで大切な真実だと信じ込んでいたイデオロギーをこき下ろされてあまりにも悔しく、しかしいくらアイン・ランドの議論に反駁しても自分の信念を擁護することができず、最終的にブルック氏は「負けを認めた」と言います。
今ではアイン・ランド哲学の熱心な推進者として知られているブルック氏は、日本アイン・ランド協会代表理事の脇坂あゆみさんの誘いで来日し、何度もセミナーや講演を行っています。聴衆からのどんな質問にもわかりやすく丁寧に応答し、通訳として隣に立っていた私も目を開かれる瞬間が何度もありました。
本書を読んでアイン・ランドやオブジェクティビズム哲学に興味を持った方は、ぜひアイン・ランド自身の著作である『SELFISHNESS 自分の価値を実現する』(Evolving)やベストセラー小説『肩をすくめるアトラス』(アトランティス)も手にとってみてください。
田村 洋一
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