『日本人が知らないブッダの話 ― お釈迦さまの生涯の意外な真相 (スマナサーラ長老クラシックス)』アルボムッレ・スマナサーラ

日本人が知らないブッダの話 ― お釈迦さまの生涯の意外な真相

 

アルボムッレ・スマナサーラ (著)

 

¥972

 

テーラワーダ仏教長老が“意外なブッダの生涯”をやさしく語ります。

(はじめに お釈迦様って、どんな人? より)
仏教の開祖である、お釈しゃ迦か様さま(ブッダ)とは、いったいどんな方だったのでしょうか?
今から約二千六百年前、インドでお生まれになったお釈迦様の生涯は謎に包まれています……と言いたいところですが、お釈迦様に関する歴史資料は、膨大に残されています。イエス・キリストよりもおよそ五百年以上前に生まれた方にもかかわらず、お釈迦様が実際に説かれた教え、その業績の記録、誕生から入滅(死去)までの伝記などは、聖書とは比較にならないくらい膨大に残されています。
お釈迦様の四十五年にわたる伝道の記録は、お釈迦様が入滅したすぐ後に、五百人の阿羅漢(解脱に達した聖者)を集めて行われた「第一結集」という経典編集のための会議でまとめられました。私の故国スリランカで信仰されるテーラワーダ仏教で伝えてきたパーリ経典は、この第一結集の流れを汲んだものです。
経典には、お釈迦様の教えとともに、その教えが語られた場所や対話した人の名前、対話が行われた背景説明なども記されました。インド文化では歴史を記録する習慣がなかったため、説法が具体的に「いつ」行われたかははっきりしませんが、それでも、経典どうしの相互関係を調べることでだいぶ明らかになっています。
第一結集では、お釈迦様の出家弟子が守るべき戒律をまとめた「律蔵りつぞう」も編纂へんさんされました。テーラワーダ仏教では、比丘びく(修行僧)が守るものだけで二百二十七もの戒律がありますが、それぞれの戒律の記述には、制定のきっかけとなったエピソードも添えられています。戒律は教団と社会との関係のなかで定められたので、当時のインド社会の様子を知るうえでかっこうの資料なのです。
しかし、この二種類の資料からだけでは、ブッダ(覚者)となって活動を始める以前のお釈迦様の姿はほとんどうかがえません。
そこで登場するのが、第三の資料となる初期経典の註釈書です。お釈迦様の死後数百年をへて仏教がインド社会で定着すると、お釈迦様の教えのみならず、その人物像、弟子たちの群像についての関心が広まりました。そこで、教えそのものには関係が薄い伝記的なエピソードが収集されて、註釈書に書き込まれたのです。
意外なことに、現在私たちが「ブッダの伝記」として親しんでいるエピソード、例えばお釈迦様の「四門出遊」や「釈迦族の滅亡」は、こうした註釈書が編まれた時代になってはじめて現れた「おはなし」なのです。
本書では、パーリ経典や律蔵の記述を中心にしながら、さらに註釈書も参考にして、日本の研究者とはまた違った視点で、お釈迦様の生涯を振り返ってみたいと思います。
さて、お釈迦様は、いったいどんな方だったのでしょうか……?

※『日本人が知らないブッダの話』は、2010年7月に学習研究社から刊行されました。電子書籍化にあたって内容に再編集を加えました。

目次

はじめに お釈迦様って、どんな人?

第1章 釈迦族とブッダの前世
釈迦族は太陽の末裔
他族との混血を嫌った釈迦族
釈迦国は大国コーサラの属国
お釈迦様は最低最悪の時代に生まれた
ひどい時代だったからこそ、仏教は共感された
仏伝はお釈迦様の過去世からはじまる
輪廻思想は仏教が整えた
お釈迦様が過去世ではげんだ十種の修行
お釈迦様の前世は「スメーダ」という名の行者
ジャータカは仏伝とインド民話のミックスサンド

第2章 この世に生まれる
天界から王妃のお腹に入る
お釈迦様が降誕するための五種の条件
マーヤー夫人が見た白象の夢の意味
「ブッダ」には三種類ある
出現を示す「如来の十七の奇跡」
日本人は「天上天下唯我独尊」を誤解してきた
お釈迦様の本名は何だったのか
ブッダの証である三十二相
「三十二相」はバラモンの秘法人相学
マーヤー夫人は男に生まれ変わった?
降誕は輪廻のゴールに向けたラストスパート
ヤソーダラー妃は悪妻ではない
シッダッタ王子は釈迦族の「希望の星」だった
「四門出遊」は完全な作り話
息子ラーフラは悪魔ではなく龍神
「愛馬カンタカに乗って出奔」も神話物語
若きビンビサーラ王との出会いと約束

第3章 覚りへの道
お釈迦様にとって苦行は「実験」
覚りへの道を示す「三つの喩え」
苦行を放棄して、菩提樹の下へ
瞑想下で悪魔と戦う
因縁のセオリーを発見する
完全な解脱は一切の煩悩を根絶する
最初の仏弟子は二人の商人だった
はじめは説法する気が起きなかった
「梵天勧請」に示された説法の意義
「初転法輪」ではじめて真理を発表する
中道と八正道を説いた本当の意図
八正道の実践で発見された真理とは
説法を聞いてたちまち解脱した五人の修行者

第4章 遍歴と布教へ
次々に弟子が覚り教団が成立
ビンビサーラ王の帰依
有力弟子の登場
教団への非難と出家の厳格化
釈迦国への凱旋と息子ラーフラの出家
ヤソーダラー妃との再会
なぜ膨大な戒律がつくられたのか
最も重い四つの戒律
戒律は変更可能だった
活動初期から定住志向だった教団
精舎・僧院は在家信者からの寄進
お釈迦様の生活

第5章 仏弟子たち
比丘の代表、サーリプッタとマハーモッガッラーナ
比丘尼の代表、ケーマーとウッパラワンナー
男性在家信者の代表、チッタとハッタカ・アーラワカ
女性在家信者の代表、クッジュッタラーと難陀母
お釈迦様の侍者アーナンダ
アーナンダ以外にもお釈迦様の侍者はいた
アーナンダとお釈迦様の深い契約
アーナンダも釈迦族の王子だった
袈裟のデザイナーはアーナンダ
体を張ってお釈迦様を守ったアーナンダ
アーナンダ、恋をした尼僧に説法する
アーナンダの懇願で女性の出家が認められた
女性の出家を認めて「しまった」と言ったお釈迦様
「比丘尼八重法」は女性差別ではない
教団分裂を企んだデーワダッタ
サンガは完成された民主主義
父王を殺したアジャータサットゥの回心
一緒に帰依したパセーナディ王とマッリカー妃
師に先立ったサーリプッタとマハーモッガッラーナ

第6章 最後の旅と入滅
ブッダ最後の一年を描いた『大般涅槃経』
最後の旅路で説いた仏教政治論
七不衰退法は国家の精神的繁栄をめざす教え
無条件の信仰は仏教ではない
日本であまり知られていない「法の鏡」の教え
遺言「自灯明・法灯明」の本当の意味
お釈迦様の寿命放棄をめぐる謎
覚者は自分で死期を決めなければならない
お釈迦様は「この世は美しい」と言った?
修行法を具体的に示して入滅を宣言
真の仏法の見分け方を説く
お釈迦様の最後の食事はキノコ? 豚肉?
最後の力をふりしぼる
正しい修行こそが最高の如来供養
仏滅寸前に必死で修行したダンマーラーマ
遺体の供養法を指示する
病床でアーナンダを慰める
クシナーラーへ向かう
最後の直弟子となったスバッダ
膨大な説法を集約した最後の言葉
入滅とともに生じた弟子の妄言
仏滅後の教団の発展

第7章 釈迦族の滅亡
コーサラ国王を欺いた釈迦族
復讐を誓ったコーサラ国のヴィドゥーダバ
お釈迦様の仲介で戦争危機は一旦回避
釈迦族滅亡は、お釈迦様の生前か、滅後か?
ついに釈迦国を攻め滅ぼしたヴィドゥーダバ
高い民族意識ゆえに滅びた釈迦族
仏伝作家の深慮とは

おわりに お釈迦様の横顔が見えてきましたか?

 

フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 3685 KB
出版社: Evolving (2018/6/8)
販売: Amazon Services International, Inc.
言語: 日本語
ASIN: B07DMLPDKB